2009年11月19日木曜日

農業と建築






















かつて郊外は、都心で働く人たちが寝に帰るベッドタウンの開発エリアとして、都市の拡張:スプロールの受け皿になってきた。また産業面をマクロで見ると、第一次産業と呼ばれる農業から工業、第三次産業の商業へとシフトしてきたのだが、ミクロな場所でみると必ずしもそのプロセスを逐一たどるわけではない。


スプロールの最前線では、農地が宅地化され、コンビニやガソリンスタンド、ファミリー向けレストランといった、車アクセスに最適化した機能が立地することになる。第一次産業から第三次産業へ、地域機能が一気にジャンプする。市街化調整区域でも例外ではない。


食を担う農業、ものづくりの工業、人へのサービスを担う商業、これら経済活動を伴う産業。人々のねぐらとなる「住」は、これらのいずれとも接続しうる機能・場所・箱である。


集約化・大規模化が求められている農業、その貴重な農地を宅地に転用して「住」として利用するのであれば、プライベートに閉じた住宅ではなく、人と人がつながりを感じることのできる機能があるべきだ。


「住」に人が集まる機能を組み込むと、住居がコミュニティの小さな拠点になる。ここで言うコミュニティとは、地域から少しだけ遊離した、趣味や好みを軸とした人のネットワークのことである。


人が集まる場所:セミパブリックエリアを設けた基壇、その上にプライベートエリアが乗り上げている構成。屋外デッキ・盛り土と植栽にも連続する床の階段化、街路の視線を遮りつつ水田と空に開放されたプライベートエリア、平面中心部の構造体力要素を埋め込んだ不定形なユーティリティエリア、ワンシェイプの外形と素材。建築内外を統合して考えること。


緩慢に進むスプロールの最前線に、「住」に統合された小さなコミュニティサイトが散在的に存在する。

【積層の景色】は、その小さな拠点のひとつになるのではないか。


竣工後2年を経て。


photo: ben matsuno

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