個人が担うひとつの脳は、一回的な一人の人生一生分だけでなく、他者が他生物が鉱物や原子がくぐり抜けてきたありとあらゆるやりとりを「想起」することができる。
しかし、同時に、限定された脳細胞の数量・脳の容積が一時に処理できない量の意味ある情報を、想起してしまうことがある。これまで蓄積されてきた記憶ひとつひとつに照らし合わせている暇がないほど急速に膨大な量の普遍項と接したとき、インプットされながら処理しきれない情報が限定された脳細胞のネットワークからオーバーフローする。
この状態こそ、一回性・個別性を宿命とする脳の構造と、繰り返し性・普遍性を想起する脳の志向性が交差した状態であり、科学と文学を統合する芸術=「建築」が立ち現れる沃野なのである。
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