あるひとつの建築現場が終わる。
工務店の現場担当者、大工、電気屋、水道屋、土工事の職人、
その他諸々の、職能を持った人たち。
彼らはどこからともなく現れて
世界にひとつだけのものを
ある意図の元につくり、
自分の仕事が終わるとまた
どこへともなく去っていく。
サザンの「旅姿六人衆」そのままに
毎回違うクライアントのために
自分が発揮しうる能力を
要求に合わせて発揮して
偉ぶることも、自慢するでもなく
さらっとやってのけて
街から街へと
無言で去っていく。
ひとつの建築が一応のまとまりを見せる、つまり竣工すると
「あぁ、あそこはもっとこうできた」
「何であのときに踏ん張れなかったんだろう」
と、必ずと言っていいほど、
悔いや自省や後悔が、発生する。
どんなに完璧だと思っていても、必ずその瞬間が訪れる。
これはもう宿痾だとすら思う。
後悔のない現場があったら、
それで建築を打ち止めにしてもいいとすら思わなくもない。
○
また別の街で
いえづくりが始まっている。
そこで実現できるかわからないが、
「粗っぽい、それでいて
ずしんと来る。」
そういうものを、わたしはつくりたい。
感傷ではなく
そう思う。